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朝日俳壇

うたをよむ

 歌壇俳壇面のコラム「うたをよむ」。今回は、夏目漱石の俳句を集めた本が刊行されたのを機に、漱石の俳句を俳壇担当記者が紹介します。

 文豪・夏目漱石は俳人でもあった。友人の正岡子規を通じて俳句に親しんだ。その作品を集めた「夏目漱石の百句」(ふらんす堂)が刊行された。著者は日本文学研究者の井上泰至(やすし)さん。「はじめに」に、こうある。「あの漱石が、俳句という極小の器に、幸福を見いだし、そこに浸っていたことが、その息づかいから伝わってくるはずだ」

 まずは、ユーモアを好んだ漱石らしい作品を紹介したい。

 初夢や金も拾はず死にもせず

 叩(たた)かれて昼の蚊を吐く木魚哉(かな)

 次は、漱石の憧れを詠(うた)った句。

 菫(すみれ)程な小さき人に生(うま)れたし

 この句について、著者は「う…

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